むなかたと申します。
今回は第32回試験過去問の中から、「発達と老化の理解」について解説していきたいと思います。
私の経験から言わせていただくと、介護福祉士の試験は過去問をしっかりと解いて、分からないところや間違えたところをしっかりとやっていけば、テキストなどを買わなくても、充分に合格が出来る問題だと思います。
試験合格に向けて、しっかりと過去問に触れていきましょう!
では、早速始めていきたいと思います。
発達と老化の理解
問題 69
Aちゃんの様子を説明する用語として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
- 1 3 か月微笑
- 2 社会的参照
- 3 クーイング
- 4 自己中心性
- 5 二項関係
社会的参照とは、問題解決場面や、行動選択場面において、自分だけでは意志決定や行動選択がしにくい時に周りの人の表情や態度、反応をみて行動を決定するような現象のことを言います。
父親がにこやかに話しているのを見て、笑顔を見せる、という行動をとったと考えられます。
解説:
1、赤ちゃんは生後3~4ヶ月頃になると、誰に対してでも笑顔を見せるようになります。これを「社会的微笑」(無差別的微笑)とも言います。
生後3ヶ月ごろから見られるため、「3ヶ月微笑」とも言われます。
この後に「社会的微笑」(差別的微笑)が見られるようになりますが、こちらは人や顔を認識できるようになって、見慣れない顔には反応しなくなっていき、日常的に見る顔(主に親など)にしか反応しなくなっていきます。いわゆる「人見知り」をしだすのがこの頃になります。
3、赤ちゃんが、「あー」とか「うー」と声を出す事を言います。舌や唇を使わなくても出せる母音一音だけを使う声を出します。
クーイングは別名「プレジャーサイン」とも呼ばれていて、赤ちゃんが「自分の口から音が出る事を発見して遊んでいる」とも考えられています。
4、ジャン・ピアジェが乳幼児期の精神構造や思考の特徴を表すのに用いた言葉。事象を自分の立場あるいは一つの視点からしか分析・認識できない、視点を変えたり視点と視点の関係をとらえたりする事ができないという時期の特性を表しています。
5、二項関係とは、赤ちゃんの発達段階の情報伝達構造をあらわします。赤ちゃん⇄お母さん、赤ちゃん⇄犬、赤ちゃん⇄他人など、二つのものの間でしか関係が成り立たない状態の事。
この問題では、Aちゃん、父親、父親の友人の3人がいて、父親と父親の友人の顔を交互に見て情報を収集している様子が見られる事から、様子を説明する用語としては三項関係が適切と思われるので誤りです。
問題 70
- 1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では、高年齢者を 75 歳以上としている。
- 2 「高齢者虐待防止法」では、高齢者を 65 歳以上としている。
- 3 高齢者の医療の確保に関する法律では、後期高齢者を 65 歳以上としている。
- 4 道路交通法では、免許証の更新の特例がある高齢運転者を 60 歳以上としている。
- 5 老人福祉法では、高齢者を 55 歳以上としている。
(注)「高齢者虐待防止法」とは、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
「高齢者虐待防止法」では、高齢者を 65 歳以上と定めています。
虐待の種類としては、「身体的虐待」「心理的虐待」「経済的虐待」「性的虐待」「介護放棄等(ネグレクト)」があります。
解説:
1、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では、高年齢者を 55歳以上と定めています。
3、高齢者の医療の確保に関する法律では、後期高齢者を 75 歳以上と定めています。65歳から74歳の「前期高齢者」と両方覚えておきましょう。
4、道路交通法では、免許証の更新の特例がある高齢運転者を 70 歳以上と定めています。
免許更新時に講習を受ける義務や高齢運転者標識の貼り付け努力義務等があります。近年問題になっている高齢者ドライバーへの対応ですね。
5、老人福祉法では、高齢者を 65 歳以上と定められています。
高齢者虐待防止法と同じだと覚えておきましょう。そうすると両方とも覚えられます。
問題 71
- 1 舌骨の位置の上昇
- 2 咽頭の位置の上昇
- 3 舌骨上筋の増大
- 4 喉頭挙上の不足
- 5 咳嗽反射の増強
喉頭が挙上している時の舌根部は、食塊を咽頭に送り込みやすいように下方に押し下がり、舌根とともに気管の入り口にある喉頭蓋も下がって、気管の入り口を塞ぎます。さらに次の瞬間、反射運動として食道の入り口が開き、喉頭蓋の上、あるいは左右の両脇を通過してきた食塊が食道に運ばれていきます。
嚥下機能の中でも重要な働きですから、これが不足すると嚥下機能は低下します。
解説:
1、舌骨は舌の土台となっており、舌骨に繋がった筋肉の動きで舌が動きます。
舌尖が持ち上がり食塊が咽頭に達すると、舌骨が持ち上げられ同時に喉頭も上前方に持ち上げられ喉頭蓋が下がり気管の入口をふさぎます。これが咽頭期の動きになります。
舌骨の位置が下がると嚥下機能の低下に繋がる可能性がありますが、上がるのは正常な動きに近いので嚥下機能が下がる可能性は低いと思われます。
2、1と同じく咽頭も上がるのが正常な動きなので、嚥下機能が下がる可能性は低いと考えられます。なので誤り。
3、顎二腹筋、茎状舌骨筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋の四つを合わせて舌骨上筋群と呼ばれています。
これらの筋肉が舌骨を動かして、その動きで舌が動くという仕組みになっています。なので舌骨上筋が増大すれば、舌を動かす力が強くなるので嚥下機能は改善されると思われるので誤りです。
5、咳嗽反射とは、気管や気道内に入り込む分泌物や異物を気道外に排除するための生体防御反応のこと。なので増強すれば嚥下機能は上昇したと言えます。
問題 72
- 1 自分の若い頃の記憶では、40 歳代の頃の出来事をよく覚えている。
- 2 数字の逆唱課題で答えられる数字の個数は、加齢による影響を受けない。
- 3 複数のことを同時に行う能力は、加齢によって低下する。
- 4 騒がしい場所での作業効率は、若年者より高齢者が高い。
- 5 エピソード記憶は、加齢による影響を受けない。
記憶に関する問題です。
記憶の分類としては、保持時間に基づく記憶の分類である、心理学的分類の短期記憶と長期記憶、臨床神経学的分類の即時記憶、近時記憶、遠隔記憶などがあります。
また、内容に基づく記憶の分類として、エピソード記憶や意味記憶、手続き記憶などが挙げられます。
加齢による影響を受け易い、受けにくいはありますが、基本的には記憶は加齢の影響を受けると言われています。
解説:
1、人によって覚えてる時期は違うので、40歳代の頃の出来事をよく覚えているとは言えません。なので誤りです。
2、数字の逆唱課題をおこなうには、ワーキングメモリー(作業記憶)が必要だと言われています。ワーキングメモリーは加齢の影響を受けますので誤りです。
4、騒がしい場所で作業をするには、集中と複数の事を同時におこなう能力などが必要になりますが、どちらも加齢により能力が低下していきますので、若年者より高齢者の方が作業効率が高い、という事は考えにくいです。
5、エピソード記憶とは、ご飯を食べた事や家族が遊びに来た事、といった記憶になります。介護をされていれば経験があると思いますが、ご飯の事や誰かにあった事などは、いわゆる物忘れとしてよく見かけるものだと思います。
問題 73
高齢者において、心不全(heart failure)が進行したときに現れる症状に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
- 1 安静にすることで速やかに息切れが治まる。
- 2 運動によって呼吸苦が軽減する。
- 3 チアノーゼ(cyanosis)が生じる。
- 4 呼吸苦は、座位より仰臥位(背臥位)の方が軽減する。
- 5 下肢に限局した浮腫が生じる。
チアノーゼとは、口唇や四肢末梢などの皮膚や粘膜が青紫色になる状態のことです。低酸素血症や末梢循環不全などが原因であらわれます。
心不全は、心臓のポンプ機能が病気など何らかの理由で正常に機能しなくなっている状態なので、血液や酸素の供給が上手く出来なくなってしまいます。その結果、チアノーゼを起こしてしまう、という仕組みになります。
心不全の症状としては、急性心不全の場合、短期間のうちに激しい呼吸困難や胸の痛み、動悸、咳き込みなどが現れ、顔面や手足が蒼白したり、寒気を感じたりする、重症だと意識障害が出る等があります。
慢性心不全の場合、日常から軽度の症状として、呼吸困難や息切れ、咳き込み、疲れやすさ、手足の冷え、動悸、足のむくみなどがあります。
解説:
1、安静にする事で息切れが治るのは間違っていませんが、安静にしたからといって速やかに治るものではありません。なので誤りです。
2、運動や作業をする事によって呼吸苦が生じて来ますので誤りです。
4、呼吸は肺の動きによっておこなわれます。座位になると横隔膜が下に下がり、肺が大きく膨らむので自然に空気を取り込みやすくなり、呼吸がしやすくなります。呼吸がしやすくなれば呼吸苦も軽減しますので誤りとなります。
5、座ったり立ったりして身体を起こしていると、水分は下に行くので下肢にむくみが出やすくなりますが、限局して生じる訳ではありませんので誤りです。
問題 74
Bさん(82 歳、男性)は脳卒中(stroke)による右片麻痺がある。ほとんどベッド上の生活で、排泄もおむつを使用している。一週間前から咳と鼻汁があり、37.2℃の微熱で、元気がなく、いつもよりも動きが少なかった。食欲も低下して食事を残すようになっていた。今日、おむつの交換をしたときに仙骨部の皮膚が赤くなり一部に水疱ができていた。Bさんの皮膚の状態とその対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
- 1 圧迫によって血流が悪くなったためである。
- 2 仙骨部にこうしたことが起こるのは、まれである。
- 3 食事量の低下とは無関係である。
- 4 体位変換は、できるだけ避ける。
- 5 おむつの交換は、できるだけ控える。
圧迫される事で血液の流れが悪くなり、赤みになったり褥瘡になったりする原因になります。
この事例の方も赤みのうちに対策しておかないと、褥瘡になる危険があります。
解説:
2、仰臥位が長いと、仙骨部や肩甲骨、後頭部など骨が出っ張ったところは圧がかかり易いので、血行も悪くなり赤くなったり褥瘡になったりする事が多いです。なので誤りです。
3、栄養状態や酸素供給が悪化すると、赤くなったり、褥瘡になったりする原因ともなるので誤りです。
4、同じ場所に圧がかかり続けると血行不良になり易いので、体位交換などをおこなって同じ場所に圧がかからないようにするのが正しいです。
5、皮膚の状態を清潔に保ったり、サラッとした状態を保つ事が、赤くなる事や褥瘡への予防となりますので、おむつ交換は通常通りおこないましょう。
問題 75
次のうち、高齢者の栄養状態を良好に維持するための対応として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
- 1 歯科健康診査を受ける。
- 2 複数の薬剤を併用する。
- 3 外出を控える。
- 4 一人で食事をする。
- 5 たんぱく質を制限する。
食事を美味しく食べるには、歯が健康でなければいけません。虫歯や歯周病があると痛みで食事が食べられなくなったりします。
歯科では噛む事や飲み込む事など嚥下機能についての相談も出来ますので、栄養状態を良い状態に保つ対応として適切です。
解説:
2、複数の薬を飲む事と栄養状態を良好に保つ事には直接の因果関係はありません。むしろ、複数の薬を併用して飲むと強い副作用が起こる可能性が高くなるとも言われており、その結果体調不良となり栄養状態が悪くなる可能性もあります。
また薬の強い成分が胃を荒らして食欲が無くなったり、吸収が悪くなったりする事で栄養状態が悪くなることも考えられます。
3、運動をしないとお腹が空かないので食事を食べられなくなります。食事が食べられないと栄養状態も悪くしまうので誤り。精神状態を良好に保つためにも外出は重要です。精神状態が悪いと食欲もなくなるでしょう。
4、一人で食事をすると自分の好きな物ばかりを食べてしまい栄養に偏りが出てしまいます。食事を楽しむためにも家族や友人などと一緒に食事をするのが望ましいです。
5、タンパク質は身体を作る重要な栄養素です。これを制限してしまうと栄養状態は悪化してしまうので誤りです。
問題 76
- 1 看護師は、糖尿病(diabetes mellitus)の薬の処方箋を交付する。
- 2 理学療法士は、糖尿病(diabetes mellitus)の食事メニューを考える。
- 3 管理栄養士は、自宅で料理ができるような作業訓練をする。
- 4 訪問介護員(ホームヘルパー)は、居宅サービス計画を立案する。
- 5 介護支援専門員(ケアマネジャー)は、訪問リハビリテーションの利用を提案する。
それぞれの専門職の役割を問う問題です。
ケアマネは本人の意向やアセスメントに基づいて、サービスの提案をおこないます。
解説:
1、薬の処方を交付するのは、医師の役割です。なので誤りです。
2、糖尿病の食事メニューを考えるのは、管理栄養士の役割なので誤りです。
3、自宅で料理ができるような作業訓練をするのは、作業療法士(OT)の役割です。なので誤り。
4、居宅サービス計画を立案するのは、ケアマネの役割なので誤り。
それでは、今回はこの辺で失礼いたします。
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