【試験対策】第32回介護福祉士国家試験。解答と解説。「認知症の理解」を分かりやすく説明いたします。【過去問】

 
むなかた
ご訪問ありがとうございます。
むなかたと申します。

今回は第32回試験過去問の中から、「認知症の理解」について解説していきたいと思います。

私の経験から言わせていただくと、介護福祉士の試験は過去問をしっかりと解いて、分からないところや間違えたところをしっかりとやっていけば、テキストなどを買わなくても、充分に合格が出来る問題だと思います。

試験合格に向けて、しっかりと過去問に触れていきましょう!

では、早速始めていきたいと思います。

認知症の理解

問題 77

2012 年(平成 24 年)の認知症高齢者数と 2025 年(平成 37 年)の認知症高齢者数に関する推計値(「平成 29 年版高齢社会白書」(内閣府))の組合せとして、適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 162 万人    約 400 万人
  • 2 262 万人    約 500 万人
  • 3 362 万人    約 600 万人
  • 4 462 万人    約 700 万人
  • 5 562 万人    約 800 万人
    (注) 平成 37 年とは令和 7 年のことである。
答え:4です。

図1-2-11 65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率

内閣府公式ホームページ「平成29年版高齢社会白書」(概要版)より引用

問題 78

認知症(dementia)の行動・心理症状(BPSD)に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 トイレの水を流すことができない。
  • 2 物事の計画を立てることができない。
  • 3 言葉を発することができない。
  • 4 親しい人がわからない。
  • 5 昼夜逆転が生じる。
答え:5です。

昼夜逆転は周辺症状の睡眠障害にあたりますので、これが正解です。

認知症の中核症状と周辺症状に関する問題です。
脳の細胞が死ぬ、脳の働きが低下する事によって、直接的に起こるのが中核症状です。
中核症状には記憶障害、見当識障害、理解。判断力の低下、実行機能障害、失行・失語・失認などがあります。
周辺症状には、妄想、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下などがあります。

解説:
1、日常的におこなっていた動作や物の操作が運動機能の障害がないにもかかわらずおこなえなくなるのが失行です。失行は認知症の中核症状なので誤りです。

2、物事をおこなう時に計画を立て、順序立てて効率良くおこなうのが実行機能になります。実行機能障害は中核症状なので誤り。

3、言葉を発する事ができなくなるのは失語です。失語は中核症状なので3も誤りです。


4、相手と自分との関係性が分からなくなってしまうのは、見当識障害です。見当識障害は中核障害なのでこれも誤りです。

問題 79

高齢者のせん妄(delirium)の特徴として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 薬剤によって生じることがある。
  • 2 症状の変動は少ない。
  • 3 意識レベルは清明であることが多い。
  • 4 徐々に悪化する場合が多い。
  • 5 幻覚を伴うことは少ない。
答え:1です。

せん妄に関する問題です。
せん妄は薬剤によって生じることがあるので、1が正解です。

せん妄とは、突然発生して変動する精神機能の障害で、通常は回復可能です。注意力および思考力の低下、見当識障害、覚醒(意識)レベルの変動を特徴とします。
多くの病気、薬剤、毒物などが、せん妄の原因になりえます。
診断は症状と身体診察の結果に基づいて下され、原因を特定するために血液検査、尿検査、画像検査を行います。
せん妄は通常、原因になっている異常を迅速に処置または治療することで治癒します。
多くの病気、薬剤、毒物などが、せん妄の原因になりえます。
診断は症状と身体診察の結果に基づいて下され、原因を特定するために血液検査、尿検査、画像検査を行います。
せん妄は通常、原因になっている異常を迅速に処置または治療することで治癒します。


MSDマニュアル家庭版 より引用

解説:
2、せん妄は手術後に突然発症したり、夕方から夜間にかけて突然発症したり、急激な変化があることが特徴になっていますので誤りです。

3、意識レベルの変動を伴いますので、これは誤りです。

4、急激に悪化することが多いので誤り。

5、妄想や幻覚、幻聴を伴うことがあるので誤りです。

問題 80

認知症(dementia)の初期症状に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 血管性認知症(vascular dementia)では、幻視が認められる。
  • 2 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)では、歩行障害が認められる。
  • 3 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)では、エピソード記憶の障害が認められる。
  • 4 アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)では、失禁が認められる。
  • 5 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)では、もの盗とられ妄想が認められる。
答え:2です。

認知症を引き起こす代表的な病気に関する問題です。
歩行障害は正常圧水頭症の代表的な症状です。

アルツハイマー病:
日本人はアルツハイマー病が最も多く6割以上を占めている。アルツハイマー病は、脳にアミロイドβやタウタンパクと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が死んで減っていくために、神経伝達ができなくなると考えられています。脳の中でも記憶を司る「海馬」の脳神経細胞が減るので、初期はもの忘れ(記憶障害)が目立ち、「空間的見当識障害(道に迷う)」や「多動(徘徊を繰り返す)」が現れることもある。現在、アルツハイマー病を根本的に治す治療はない。

血管性認知症:
脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害によって起こる認知症。以前に脳血管障害にかかっていたり、高血圧、糖尿病、心疾患など脳血管障害の危険因子を持っている人に起こりやすく、アルツハイマー病を併発していることも多い。主な症状は、日常生活に支障を来たすような記憶障害とその他の認知機能障害(言葉、動作、認知、ものごとを計画立てて行う能力などの障害)だが、歩行障害、手足の麻痺、呂律が回りにくい、パーキンソン症状、転びやすい、排尿障害(頻尿、尿失禁など)、抑うつ、感情失禁(感情をコントロールできず、ちょっとしたことで泣いたり、怒ったりする)、夜間せん妄(夜になると意識レベルが低下して別人のような言動をする)などの症状が早期から見られることもある。根本的な治療法はないが、脳の働きや血流を改善する薬などを使って、症状の改善を図る。

レビー小体型認知症:
脳の大脳皮質(人がものを考える時の中枢的な役割を持っている場所)や、脳幹(呼吸や血液の循環に携わる人が生きる上で重要な場所)にレビー小体という特殊なたんぱく質がたくさん集まることによって神経細胞が壊れ、認知症の症状が現れる。
レビー小体病はアルツハイマー病に続いて発症数が多く、認知症全体の約20%を占める。またアルツハイマー病は女性の発症者が多いのに対し、レビー小体病は男性に多く、女性の約2倍と言われている。
初期段階ではもの忘れよりも、実際にはないものがありありと見える「幻視」や、現実の状態を正確に把握できない「誤認妄想」を訴えたり、パーキンソン症状が現れることも多い。抗認知症薬の塩酸ドネぺジルはレビー小体病の進行を抑える効果があるとされ、健康保険が適用されている。

前頭側頭型認知症:
脳の中でも、物を考えるなど脳の中枢的な役割を持った「前頭葉」と、言葉の理解や記憶、さらに聴覚や嗅覚も司っている「側頭葉」が委縮し、認知症が起こる。前頭側頭型認知症は、前頭側頭葉変性症の1つで、ピック病や運動ニューロン疾患型、前頭葉変性症も含まれる。
前頭側頭型認知症ではもの忘れはあまり見られず、「同じ言葉や行動を繰り返す」「食行動の異常(同じものばかり食べたがる、夜中に冷蔵庫のものを食べあさるなど)」「集中力や自発性の低下」「反社会的な行動(万引きやルールを無視するなど)」「なかなか言葉が出てこない」といった症状が目立つ。

正常圧水頭症:
症状は、足が上がらない、小刻みで不安定な歩行、物忘れ及び無気力、尿失禁などが典型です。頭蓋内圧が正常範囲の水頭症を正常圧水頭症と呼び、くも膜下出血や腫瘍、外傷などの後に続いて発症する場合を続発性正常圧水頭症といい、原因が特定できない場合を特発性正常圧水頭症と言います。高齢者認知症の患者の5%~10%が特発性正常圧水頭症と言われています。
外科手術で治療が可能な場合があるのが特徴です。

認知症フォーラム.com より引用

解説:
1、幻視が見られるのは、レビー小体型認知症の初期症状なので誤りです。

3、エピソード記憶の障害が認められるのは、アルツハイマー型認知症の初期症状なので誤り。

4、正常圧水頭症や認知症が進行してくると見られる症状です。なので誤りです。

5、物盗られ妄想は認知症ではよく見られる症状ですが、レビー小体型認知症に見られるというよりは、認知症全体で見られ、特にアルツハイマー型認知症や血管性認知症に多い症状です。

問題 81

認知症(dementia)の発症リスクを低減させる行動に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 抗認知症薬を服用する。
  • 2 睡眠時間を減らす。
  • 3 集団での交流活動に参加する。
  • 4 運動の機会を減らす。
  • 5 飽和脂肪酸を多く含む食事を心がける。
答え:3です。

人との交流によって脳に刺激が与えられ、それが発症のリスクを下げると言われています。

解説:
1、抗認知症薬は発症した認知症の進行を抑えるものであって、認知症の発症自体を遅らせるものではないので誤りです。

2、睡眠時間を減らす事と認知症の発症のリスクを減らす事には因果関係は発見されていません。睡眠時間はしっかり確保しましょう。

4、運動する事によって、脳に刺激が与えられるので発症のリスクを軽減する効果があり誤りです。

5、牛や豚肉に多く含まれる飽和脂肪酸は、過剰摂取する事で動脈硬化や脳卒中のリスクが高くなると言われています。血管性認知症のリスクが高くなるので誤り。

問題 82

抗認知症薬に関する次の記述のうち、正しいものを 1 つ選びなさい。
  • 1 若年性アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type with early onset)には効果がない。
  • 2 高度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)には効果がない。
  • 3 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)には効果がない。
  • 4 症状の進行を完全に止めることはできない。
  • 5 複数の抗認知症薬の併用は認められていない。
答え:4です。

残念ながら、現在でも認知症の進行を完全に止めるお薬はありません。

解説:
1、若年性アルツハイマー型認知症でも抗認知症薬の効果は認められているので誤りです。

2、進行度に応じてお薬が使用されているので誤りです。

3、アリセプト(塩酸ドネペジル)はレビー小体型認知症の治療薬として用いられます。なので、効果がないは誤りです。
ただし、レビー型認知症の方は薬剤に対する反応が大きいので薬を使う時には注意が必要です。

5、症状や進行に応じて複数のお薬を使う場合があります。なので誤り。

問題 83

前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)の症状のある人への介護福祉職の対応として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 周回がある場合は、GPS追跡機で居場所を確認する。
  • 2 甘い食べ物へのこだわりに対しては、甘い物を制限する。
  • 3 常同行動がある場合は、本人と周囲の人が納得できる生活習慣を確立する。
  • 4 脱抑制がある場合は、抗認知症薬の服薬介護をする。
  • 5 施設内で職員に暴力をふるったときは、警察に連絡する。
答え:3です。

常同行動をふまえた、生活習慣を考えると、無理が起こりにくい生活習慣が目指せるかと思います。

解説:
1、周回とは同じところをグルグルと歩いてしまう事を言います。GPSは居場所が分からなくなってしまう人の居場所を知るための機械です。同じところを回っている人には意味がありません。なので誤りです。

2、制限してしまうとストレスや異食の要因となるので、小分けに食べてもらうなどの工夫が必要です。

4、お薬の事は、まず医師に相談しましょう。介護職がいきなり薬を飲んでもらった場合、身体拘束のドラッグロックにあたる可能性も出てきますので。

5、いきなり警察には通報しません。

問題 84

Cさん(78 歳、男性、要介護 2 )は、 4 年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断を受け、通所介護(デイサービス)を週 1 回利用している。以前からパソコンで日記をつけていたが、最近はパソコンの操作に迷い、イライラして怒りっぽくなったと娘から相談を受けた。 介護福祉職が娘に対して最初に行う助言の内容として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 パソコンの処分
  • 2 パソコンの使い方の手助け
  • 3 日記帳の購入
  • 4 薬物治療について主治医に相談
  • 5 施設入所について介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談
答え:2です。

まずはパソコンの使い方に迷わないように手助けする事から始めましょう。介護福祉職としては、パソコンのどの操作に迷っているのか、どうすればその問題を解決できるのか、という視点で考えていきましょう。

解説:
1、パソコンで日記をつけるという、ご本人の習慣がなくなってしまうので誤りです。

3、パソコンの操作に迷って、イライラして怒りっぽくなっているので、まずはその問題を解決する事から始めましょう。
日記を購入するのは、本人がパソコンの操作はもう無理です、となってからでも遅くないです。

4、いきなり薬物治療の相談はしません。主治医に相談するとしても薬物治療が必要かどうか判断するのは医師の役割です。
アルツハイマー型認知症の診断が出ていますので、介護福祉職としては、それを踏まえて、パソコンの操作に迷う事へのケアをおこないましょう。

5、いきなり施設入所の相談はしません。パソコンの操作に迷うくらいで施設に入所する必要性はありません。

問題 85

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で生活している軽度の型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)のDさんは、大腿骨の頸部を骨折(fracture)して入院することになった。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の介護福祉職が果たす役割として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 理学療法士に、リハビリテーションの指示をしても理解できないと伝える。
  • 2 介護支援専門員(ケアマネジャー)に、地域ケア会議の開催を依頼する。
  • 3 医師に、夜間は騒ぐ可能性があるので睡眠薬の処方を依頼する。
  • 4 看護師に、日常生活の状況を伝える。
  • 5 保佐人に、治療方法の決定を依頼する。
  • 答え:4です。

    生活の場所が変わっても、生活自体が大きく変わらないように看護師に日常生活を伝えておく必要があります。

    解説:
    1、Dさんがリハビリテーションの指示をしても理解が出来ないという事は、問題の中から読み取れないので誤りです。

    2、地域ケア会議は、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法です。
    地域包括支援センターなどが主催するので誤りです。

    3、夜間に騒ぐからという理由だけで睡眠薬を処方してもらうと身体拘束に該当する場合もあります。しかも可能性だけで、騒がない可能性すらある。

    5、Dさんに決定の能力があるかないかが問題からは分かりませんので、誤りです。

問題 86

Eさん(75 歳、男性)は、 1 年ほど前に趣味であった車の運転をやめてから、やる気が起こらなくなり自宅に閉じこもりがちになった。そのため、家族の勧めで介護予防教室に参加するようになった。最近、Eさんは怒りっぽく、また、直前の出来事を覚えていないことが増え、心配した家族が介護福祉職に相談した。相談を受けた介護福祉職の助言として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
  • 1 「認知症(dementia)でしょう」
  • 2 「趣味の車の運転を再開するといいでしょう」
  • 3 「老人クラブに参加するといいでしょう」
  • 4 「音楽を流して気分転換するといいでしょう」
  • 5 「かかりつけ医に診てもらうといいでしょう」
答え:5です。

直前の事を覚えていない事もあるので、一度早いうちに医師に診てもらうのが良いでしょう。

解説:
1、介護福祉職は診断できませんので、Eさんが認知症かどうかは医師の診断を受けましょう。

2、最近の困りごととしては、怒りっぽくなった、直前の事を覚えていないとなっているので、まずはこちらを解決しましょう。

3、介護予防サービスに参加されているので、あまり効果はないと思われます。
ご本人の意向も聞いていませんし。

4、音楽が気分転換になるかどうかが分かりませんので誤りです。

それでは、今回はこの辺で失礼いたします。


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